証拠金を減らすには (1) ― 2012/01/07 17:20
久しぶりの更新にもかかわらず、ブログ村の注目記事ランキングで第1位をいただきました。それほどアクセス数が多い訳ではないのですが、これはどういう仕組みなのでしょうか?
まぁ、注目戴いているという事実を前向きにとらえて、頻繁に更新することを心がけます。
もうだいぶ前になってしまいましたが、OPMarginを使っていただいているYさんから質問をいただき、色々とやり取りしたのですが、最終的にどうしたら証拠金の増加を防ぐことができるかという話になりました。皆さん独自にそれなりのやり方があると思いますが、この点について少し書いてみたいと思います。ひょっとしたら数回のシリーズになるかもしれませんし1回で打ち切りかもしれません(笑)。
「デルタヘッジにより証拠金の急増を防ぐ」
まずはこのアプローチについて検証してみることにします。簡単にいうと、デルタ値をニュートラル(ゼロ)に維持しておくことにより、日経平均が急上昇または急下落しても。証拠金が大幅に増加するのを防ごうというものです。
(ポジション例) 2月限月 P 7,500 円 24円 5枚売り IV 26.09%
証拠金 |
SpanRisk |
NetOptionValue |
465,000 |
345,000 |
-120,000 |
1/6では、証拠金465,000円があればこのポジションを組むことができます。
このポジションのGreek指標を計算してみると下記の通りとなります。
Delta |
Gamma |
Kappa |
Theta |
0.3495 |
-0.00105 |
-18.62830 |
6.93090 |
デルタが0.3495ですから、日経平均が上がればいいのですが、下落すると含み損が出て証拠金が増えます。特に、ネガティブガンマ(ガンマがマイナス)で下落の幅が大きくなるとデルタ値は加速度的に傾きを増すことが分かります。また、カッパ(ベガ)の絶対値が-18と大きいので、IVが上昇する局面では、ちょっと大変になりそうだということが分かります。次限月Putの裸売りでヘッジしていませんのでこんなものでしょう。
3連休をはさんで、万が一ヨーロッパかアメリカで悪材料が出て、10日の日経平均が下がったら、当然このポジションから含み損が発生して、証拠金が上がります。仮に、日経平均が350円下がって、IVが5%上昇したらどうなるでしょう。最近の日経平均の動きからするとそこまではないでしょうが、過去の動きから考えると年に数回は起きるシナリオで決して非現実的なものではありません。
シミュレーションをしてみると、価格は90円に上昇して、含み損は33万円、証拠金は下記の通り、倍以上の1,135,000円になってしまいます。
証拠金 |
SpanRisk |
NetOptionValue |
1,135,000 |
685,000 |
-450,000 |
Greek指標を見てみると、デルタは1です。要は先物を1枚買っているのと同じで、万が一続落にでもなれば傷口はもっと広がります。
Delta |
Gamma |
Kappa |
Theta |
1.03855 |
-0.001950 |
-33.5477 |
16.7902 |
ここまで来てしまうと、デルタの調整は容易ではありません。となると6日の段階でよりデルタをニュートラルに近づけておけばよかったということになります。P7,500 円 24円 5枚売りのデルタをニュートラルに近づける方法はいろいろあります。ミニや先物を考えないとすると、Putを買うか、Callを売るかです。Putを買うとなると、せっかく売って手に入れたプレミアムが減ってしまいます。Callを売れば、デルタはニュートラルに近づく上に、Callを売ったプレミアムが手に入ります。これはいいと思われますが....。Callを売って、デルタをニュートラルに近づけた時どうなるか検証してみましょう。
(ポジション例) 2月限月 P 7,500 円 24円 5枚売り IV 26.09%
2月限月 C 9,000 円 20円 3枚売り IV 17.11%
証拠金 |
SpanRisk |
NetOptionValue |
516,900 |
336,900 |
-180,000 |
Putのみの売りの時より、証拠金は約5万円(516,900-465,000)増えてしまいます。ただ、Callを売ったプレミアムが6万円入ってきますから、実質的な現金残は約1万円のプラスです。Greek指標を見てみましょう。
Delta |
Gamma |
Kappa |
Theta |
0.0645 |
-0.002220 |
-32.06722 |
10.22361 |
デルタは0.3495だったのが0.0645まで下がり、ニュートラルに近づきました。これはいいぞと思えますが、ガンマがが約2倍、カッパ(ベガ)が-18.62830から-32.06722と絶対値が倍近く大きくなるのが気になります。
では、1/10に日経平均が350円下がって、PutのIVが5%上昇、CallのIVが3%上昇したらどうなるでしょう。早速シミュレーションしてみましょう。
先ほど同様P7,500の価格は90円に上昇ですが、C9,000の価格は5円まで下がるので、含み損は28.5万円で先ほどの33万円より少なくなりCallを売った効果が多少ですが出ます。証拠金はどうでしょう。1,154,800円とPutだけの1,135,000円より2万円ほど多くなります。せっかくデルタをニュートラルに近づけたのに証拠金の上では効果なしということになります。
証拠金 |
SpanRisk |
NetOptionValue |
1,154,800 |
689,800 |
-465,000 |
Greek指標を見てみると、デルタは0.95と先ほどよりは多少ましとはいえほぼ1です。先物を1枚買っているのと同じという状況の改善はありません。
Delta |
Gamma |
Kappa |
Theta |
0.95101 |
-0.002370 |
-38.22182 |
18.30844 |
取引経験が長い方にとっては当たり前のことですが、デルタを調整と証拠金を減らすことは必ずしもイコールではないということがお分かりいただけるのではないでしょうか。(続く)
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「OPMargin」 オプションの証拠金の計算、シミュレーションがEXCELでできます。改良して初めての人にも使いやすくなりました。1月中旬10日間の無料開放予定。
有料ですが、日々の取引にとても有効なツールです。今日の証拠金はもとより、プライス・スキャンレンジが変わったら証拠金はどうなるか、時価情報をもとに今日の証拠金はいくらになるかというようなシミュレーションもできます。
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過去ログピックアップ、証拠金の理論的な説明や興味深い話題を集めてありますのでご覧ください。
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