証拠金を減らすには (2) ― デルタヘッジ(2) ― 2012/01/09 19:53
「デルタヘッジにより証拠金の急増を防ぐ」 -- Put買いでヘッジ
前回は、Callを売って、デルタをニュートラルに近づけた場合は証拠金の急増を防ぐことはできないということを検証しました。今回は、異なる権利行使価格のPutを買ってデルタヘッジをした場合どうなるかを確かめてみたいと思います。
(ポジション例) 2月限月 P 7,500 円 24円 5枚売り IV 26.09%
証拠金 |
SpanRisk |
NetOptionValue |
465,000 |
345,000 |
-120,000 |
Delta |
Gamma |
Kappa |
Theta |
0.3495 |
-0.00105 |
-18.62830 |
6.93090 |
前回同様のポジションです。
これを、①P7,250円の買い、②P7,750の買いの二通りでどうなるか調べてみましょう。
(ポジション①) 2月限月 P 7,500 円 24円 5枚売り IV 26.09% プレミアム+120
2月限月 P 7,250 円 16円 6枚買い IV 29.30% プレミアム -96
証拠金 |
SpanRisk |
NetOptionValue |
109,000 |
85,000 |
-24,000 |
Delta |
Gamma |
Kappa |
Theta |
0.0927 |
-0.000270 |
-2.86234 |
0.3405 |
(ポジション②) 2月限月 P 7,500 円 24円 5枚売り IV 26.09% プレミアム+120
2月限月 P 7,750 円 43円 2枚買い IV 23.89% プレミアム -86
証拠金 |
SpanRisk |
NetOptionValue |
171,800 |
137,800 |
-34,000 |
Delta |
Gamma |
Kappa |
Theta |
0.0957 |
-0.000350 |
-7.45448 |
3.12548 |
ポジション①、ポジション②ともデルタとガンマはほぼ同じ値で、ヘッジしないときに比べてデルタは0に近づいています。ただ前回のCallを売った時のデルタが0.0645でしたので、それよりもデルタの絶対値は大きいのですが、証拠金の額は②の方でも171,800円とヘッジしない場合の465,000円より大幅に低下です。ただ、受け取れるプレミアムは、裸売りの時の120千円から①で24千円、②で34千円とほぼ証拠金と比例しているといえるでしょう。ただ、カッパ(ベガ)の絶対値は、②の方が2.5倍ぐらい大きくなっています。これがどういう影響を与えるのでしょうか。
前回同様これらのポジションが3連休明けに日経平均が350円下がり、IVが5%上昇したらどうなるか調べてみましょう。
ポジション |
証拠金 |
SpanRisk |
NetOptionValue |
含み損益 |
ヘッジなし |
1,135,000 |
685,000 |
-450,000 |
-330,000 |
① |
175,000 |
85,000 |
-90,000 |
-66,000 |
② |
488,400 |
328,400 |
-160,000 |
-126,000 |
ポジション |
Delta |
Gamma |
Kappa |
Theta |
ヘッジなし |
1.03855 |
-0.001950 |
-33.5477 |
16.7902 |
① |
0.20635 |
-0.000270 |
-2.45336 |
-0.38726 |
② |
0.40751 |
-0.000890 |
-16.88846 |
9.0465 |
デルタ、ガンマがほぼ同じであった①と②で思った以上の差が出るのはカッパ(ベガ)の差と言えそうです。日経平均下落後のデルタに0.2と0.4で倍の差が出ます。また、含み損も倍の差が出ます。受取プレミアムの差は1万円ですが結果は大きく異なります。
(図1 ポジション①)
(図2 ポジション②)
グラフを見ても1/6の時点では②より①の方が有利なポジションと言えそうです。Call売った時と比べても、同じようなデルタでも証拠金と含み損益の結果は大きく異なることが分かります。
言うまでもないですが、オプションは奥が深く、分析力の違いで結果に大きな差が出ても不思議はありません。
(前回好調でしたので 続く)
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コメント
_ ぬきち ― 2012/01/10 02:35
_ DNI ― 2012/01/10 09:33
過分なお言葉をいただきありがとうございます。
続編、ご期待に添えるように構想中ですのでしばしお待ちください。
どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
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