プライス・スキャンレンジ ― 2012/06/14 21:28
前回は普段あまりなじみがない「商品内スプレッド」と「売最低証拠金」の話でしたが、今回はみなさんよくご存知のプライス・スキャンレンジについて書いてみたいと思います。
プライス・スキャンレンジに関しましては、以前かなり詳しく書いたのですが、震災時に証券会社が追証の取りはぐれで大きな損害を受けた影響でプライス・スキャンレンジ(以下、”PSR”と略す)の設定方法が変更になってしまいました。他のパラメータと異なり、証券会社のサイトでもPSRの値はすぐに確認できる、一番わかりやすいパラメータと言えるでしょう。PSRを決定する方法は、大証のサイトに記載されています。http://www.ose.or.jp/derivative/5894
参考までに大証さんのサイトからお借りした図を下記します。
この式さえわかれば、数学アレルギーの方でもEXCELを使って簡単にPSRを計算することができます。
ボラティリティ・インデックス(VI) ―― 日経新聞の「日経平均ボラティリティー・インデックス」を使います。6/14のVIは、27.73です。
パーセント―― VIはあくまで指数なので、%にするには100で割れということです。
ルート250 ―― 取引日が年間250日ということです。詳しいことは統計学の教科書で確認してください。EXCELでは、セルに =SQRT(250) と入力します。
2.58 ―― 正規分布で99%のケースをカバーする係数
原資産価格―― 日経平均の終値です。6/14の終値は8,568.89
切上げ―― なぜかよくわかりませんが30円単位に切り上げます。
金曜日に「日経平均ボラティリティー・インデックス」と日経平均の終値を調べれば、月曜日に証券会社のサイトで調べるまでもなくPSRを算出することができます。金曜日に算出したPSRは、翌々週のPSRになります。
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2012/6/14 |
100 円上昇 |
1.0%上昇 |
VI |
27.73% |
27.73% |
28.73% |
ルート250 |
15.8113883 |
15.8113883 |
15.8113883 |
正規分布 |
2.58 |
2.58 |
2.58 |
日経平均 |
8,568.89 |
8,668.89 |
8,568.89 |
切上げ (30) |
30 |
30 |
30 |
乗数 |
1,000 |
1,000 |
1,000 |
計算結果 |
387.725 |
392.250 |
401.707 |
30円単位に切上げ |
390 |
420 |
420 |
上昇幅 |
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4.52 |
13.98 |
30円上昇するには |
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663.01 円 |
2.15% |
6/14のVIと日経平均終値から算出したPSRは390円になります。ただ切上げ前の数字が387.725円ですから、あと2円強で390円を突破して、PSRが420円に上がります。
次に日経平均が100円上昇、VIが1%上昇したらPSRがどうなるかシミュレーションしました。
日経平均100円の上昇で計算結果は、392.250円で、387.725円からの上昇幅は約4.52円です。PSRを30円押し上げるためには、日経平均が663.01 円上がる必要があります。これに対して、VI の1%上昇の計算結果は、401.707円で上昇幅は13.98円です。PSRを30円上昇させるためには、日経平均では663.01 円 (30/4.52*100)、VIでは、2.15% (30/13.98*1%) 上昇する必要があります。日経平均が663円動くのは年に1回あるかないかですが、VIの2.15%上昇は、起きる時には月に、いや週に1-2度起こり得ます。PSR、プライス・スキャンレンジと言いながら、プライスよりVIすなわちボラティリティの影響が大きいのはどういうことでしょう。
さらにここまで書いて大きな疑問がわきました。
(1) VIが10%上昇したが、日経平均は100円の下落でおさまった
(2) 日経平均が大荒れで、VIが10%上昇、日経平均が500円下落
この2つのケースでPSRをより大きな数値に設定すべき状況はどちらでしょうか?当然 (2)の方だと思います。ところが、今のルールで計算してみると、なんと(2)のPSRの方が低くなります。
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(1) 10.0%上昇 |
(2) 10.0%上昇 |
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2012/6/14 |
-100 円下落 |
-500 円下落 |
VI |
27.73% |
37.73% |
37.73% |
ルート250 |
15.8113883 |
15.8113883 |
15.8113883 |
正規分布 |
2.58 |
2.58 |
2.58 |
日経平均 |
8,568.89 |
8,468.89 |
8,068.89 |
切上げ (30) |
30 |
30 |
30 |
乗数 |
1,000 |
1,000 |
1,000 |
計算結果 |
387.725 |
521.390 |
496.764 |
30円単位に切上げ |
390 |
540 |
510 |
現在のPSR決定方法の算式では、日経平均が低ければ低いほどPSRを押し下げることになります。日経平均が大きく下落した方が、証拠金が安くなるのはどうしても不思議でなりません。
個人的には以前のルールで、最低PSRを設定するというのが一番合理的な方法ではないかと思っています。
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「OPMargin」 オプションの証拠金の計算、シミュレーションがEXCELでできます。
「OPMargin」を使うと、現在のポジションが「売最低証拠金」に該当するかが分かります。
有料ですが、日々の取引にとても有効なツールです。今日の証拠金はもとより、プライス・スキャンレンジが変わったら証拠金はどうなるか、時価情報をもとに今日の証拠金はいくらになるかというようなシミュレーションもできます。この機会に使ってみてはいかがですか?
どんなことができるか (「OPMargin」のマニュアルに移動します)
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過去ログピックアップ、証拠金の理論的な説明や興味深い話題を集めてありますのでご覧ください。
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