SPAN証拠金(5) --- ボラティリティ・スキャン・レンジ2010/12/14 16:09

今回は、前回のインプライド・ボラティリティとSpan証拠金との関係を説明することにします

今回は、前回のインプライド・ボラティリティとSPAN証拠金との関係を説明することにします。

SPAN証拠金を計算する上で、いくつかのパラメーターが設定されています。代表的なのは、おそらく皆さんご存知だと思いますが、(3)で説明したプライス・スキャン・レンジです。そして、もうひとつが今日のボラティリティ・スキャン・レンジです。

 

日経平均の過去24週間の変動幅(絶対値)のうち、2番目に大きいものと、過去4週間で一番変動幅が大きかったものを比べて、大きいほうをプライス・スキャン・レンジとしています。

ボラティリティ・スキャン・レンジも、まったく同じメカニズムで決定されますが、対象が日経平均の変動幅ではなくて、日経平均オプション1限月のインプライド・ボラティリティの変動幅になります。

 

日経平均の前日比の変動幅は、ニュースで「今日の日経平均は前日比100円高.....」という具合に放送されますので、今日のプライス・スキャン・レンジはいくらになるか容易に分かります。ところが、ボラティリティ・スキャン・レンジはどうでしょう。

 

まず、ボラティリティ・スキャン・レンジのボラティリティとは、インプライド・ボラティリティのことです。そして、SQ前の1週間のみ2限月、それ以外の週は1限月のオプションが対象となります。対象となる限月には、PutとCall、そしてそれぞれに複数の権利行使価格が存在します。個々の銘柄にそれぞれのインプライド・ボラティリティがありますので、下記の要領のように、出来高で加重平均して、その日の基準ボラティリティを計算します。

(例)

プット・コール

権利行使価格

IV

出来高

P

10000

16.63%

4,829

P

9750

18.25%

7,204

P

9500

19.26%

5,801

P

9250

20.88%

8,623

P

9000

23.14%

5,292

C

10000

17.82%

712

C

10250

17.07%

3,228

C

10500

16.78%

4,758

C

10750

16.60%

4,186

C

11000

16.54%

12,147

 

 

 

 

 

加重平均

18.39%

 

 

仮に前日の基準ボラティリティが、19.52%だとすると、19.52% - 18.39% = 1.13% が今日のボラティリティの変動幅となります。

 

プライス・スキャン・レンジと異なり、ボラティリティ・スキャン・レンジを自分で計算するのは不可能です。まず、個々の銘柄のインプライド・ボラティリティを計算しなければならないのですが、ブラック・ショールズ式を使って、色々とやってみても大証が発表するインプライド・ボラティリティと一致しません。WEB上の証券会社やQUICKなどのインプライド・ボラティリティの数字もそれぞれ異なり、大証の数字とは一致していません。加重平均のために、出来高を調べるのもそう容易ではありません。

 

唯一の方法は、大証の下記のサイトでダウンロードできるオプション理論価格のCSVファイルの中に(EXCELで開くとQ列)にその日の基準ボラティリティが記載されているので、これを使うことです。

http://www.ose.or.jp/market/trading_data/option_price

 

A

B

C

D

 

Q

対象銘柄

オプション

限月

権利行使価格

基準ボラティリィティ

NK225E   

OOP

201012

9250

 

0.209

NK225E   

OOP

201012

9500

 

0.209

NK225E   

OOP

201012

9750

途中省略

0.209

NK225E   

OOP

201012

10000

 

0.209

NK225E   

OOP

201012

10250

 

0.209

NK225E   

OOP

201012

10500

 

0.209

 

この基準ボラティリティ24週間分を使って、ボラティリティ・スキャン・レンジがいくらになるか調べることができます。まず、24週の基準ボラティリティの変動幅の大きいものの上位のランキングは下記のとおりとなります。

 

日付

基準ボラティリティ

前日比絶対値

ランク

2010/8/13

29.67%

4.50%

1

2010/10/1

23.68%

4.14%

2

2010/9/30

27.82%

3.96%

3

2010/12/2

24.45%

3.64%

4

2010/8/25

32.76%

2.97%

5

2010/8/17

28.30%

2.93%

6

2010/8/31

32.60%

2.83%

7

2010/7/16

30.51%

2.76%

8

2010/8/9

28.62%

2.68%

9

2010/9/6

29.70%

2.64%

10

 

直近4週間でランクインしたのは、4位の12/2だけで、24週で2位の10/1よりも低いので、採用されるボラティリティ・スキャン・レンジは10/1の4.14%で、小数第2位を切り上げした4.2%となります。

 

ボラティリティ・スキャン・レンジは、オプションのSPAN証拠金を計算するためだけに必要なパラメーターです。先物の場合は、プライス・スキャン・レンジの1000倍がそのままSPAN証拠金となります。これに対してオプションでは、プライス・スキャン・レンジに基づいて、日経平均の値を変化させるだけではなく、ボラティリティ・スキャン・レンジに基づいてインプライド・ボラティリティも変化させて、オプション価格をシミュレーションして、明日想定される最大損失をSPAN証拠金としています。

 

ボラティリティ・スキャン・レンジが変わることにより、オプションのSPAN証拠金にどの程度のインパクトがあるか?これは、

オプションの限月(すなわちオプションの残存期間)、

権利行使価格が現在の日経平均からどの程度離れているか、

元のインプライド・ボラティリティの水準

などにより影響が異なり、一概には言えず、とても複雑です。

 

しかし、少なくともボラティリティ・スキャン・レンジの変更は、オプションのSPAN証拠金にプライス・スキャン・レンジの変更以上の影響があると考えておいたほうがいいと思います。

影響を明示できないせいか、一部の証券会社は、ボラティリティ・スキャン・レンジの変更を投資家に告知していませんが、この姿勢にはいささか疑問を感じます。オプション取引をする上で、インプライド・ボラティリティは時として、日経平均の動き以上に重要だからです。

 

 

閑話休題 VIX指数 (2)

 

VIX指数については前回も書きましたが、S&P500指数オプションのインプライド・ボラティリティを基準としたVIXばかりに注目が集まって、肝心の日経平均のインプライド・ボラティリティの動向に誰も目を向けないのは本当に変な話です。突き詰めて考えれば、VIXとは何か、インプライド・ボラティリティとは何かを理解している人が少ないということかもしれません。

今日取り上げた大証が日々発表している、基準ボラティリティは、まさに日本版のVIX指数です。基準ボラティリティの日々の動きを注視していると日経平均の明日が見えてくるかもしれません。

 

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